「家の聲を聴く/Silence」

 

私の名古屋にある実家は祖母と二世帯住宅であった。植物が多い茂り、家の周囲も自然が多い環境だった。

生まれた頃から20年以上住んでいたのだが、私は東京で一人暮らしをはじめ、姉も一人暮らしをし、祖母もコロナ禍で亡くなると家の中は父と母だけになった。人がいなくなると空間は徐々に死に始めるのか、帰省すると床はいつしか傷みが強く感じられるようになっていった。周囲にもマンションや家が建つようになり、遊んでいた竹林もいつの間にか切り開かれて公道になり、実家だけが時代から取り残されるように見えてきた。2023年、その実家も更地と化し別の建物が建つことになった。

歴史に残されないような生活の記憶は至る所に存在する。私はそんな周縁の記憶を留め、消え去る家の記憶を聞いてみたいと思った。


私が引っ越した家から歩いて1分もしないところにある「家劇場」がまもなく老朽化から取り壊しとなる。

この家も劇場やイベントを行う場所として様々な記憶を重ねてきただろう。2つの消えゆく“家”を題材に歴史の周縁で消失するものに思いを馳せつつ、

終わりゆくものたちについて考えていきたい。

 

物自体を人のように扱うアミニズム的文化が日本人には備わっているからかもしれないが、「無人演劇祭」(2019)での仲町の家でも同タイトルの展示をラウンジという形で展開した。この展示ではその際の要素を発展させたものである。演劇に軸を置いてきた植村初の個展となる。

 

会場:家劇場

東京都足立区千住旭町34−10

会期:2023年 1月28日(土)- 29日(日)

            12:00-17:00